令和2年度 福島県県立高校 Ⅱ期選抜出題傾向分析
国語
大問は例年通りの六題構成。読解は韻文(詩)・古文・小説・論説文とあらゆるジャンルの文章が出され、また小説と論説文はやや長めの文章、かつ記述問題も多い。それに加えて作文もあるため、「速く正確な読解力」「記述対応力」が必要である。
大問1 漢字・基礎知識
今年度から漢字の読み書きは大問1に集約されるようになった。難易度に関しては例年通り。読みには中学校で習うものもあるが、書きはすべて小学校4年~6年までのもの。基礎知識は「書体」に関するものだった。基礎知識は毎年出題されるが、文法・敬語・熟語の構成・四字熟語・ことわざ・慣用句など幅広い知識が求められる。
大問2 韻文(詩)
詩→短歌→俳句のローテーション通り、今年度は詩の出題だった。本文と問題文を丁寧に照らし合わせればそれほど難しい問題はない。
大問3 古文
今年度は古文のみの出題となった。本文だけでは文意を理解するのはやや難しいが、設問にある現代語の会話文を読めばおおよそどのような内容なのかを理解することは可能である。今年度は、資料に照らし合わせて別解釈の理解を問うという新傾向の問題も出題された。古語や古典文法がわからなくてもある程度は対処できるが、古文の独特な言葉の使い方には慣れておきたい。また、漢文が出題される年もあるので、漢文の基礎知識、読解練習も必要である。
大問4 小説
内容は例年通り、思春期の主人公が日常生活の中で壁にあたり、それを乗り越えて成長していくというストーリーの一部分である。記述問題は2題出題されているが(30字と60字の制限あり)、どちらも本文から根拠にあたる部分を探してまとめていけばよい問題。選択問題は3題出題されているが、これは一つ一つの選択肢を吟味し、消去法を徹底すれば正答にたどり着くことは難しくない。
大問5 論説文
小問2で文法問題が出題された。「の」の識別の問題で、高校受験では頻出。本文のテーマは「自由」で、それほど難しいものではないが、論説文特有の難しい言葉が多くあり、普段からいろいろなテーマの論説文に触れていないと正確に文脈を把握するのは困難。記述問題は2題出題されたが、小問3(1)は本文の該当箇所を見つけ、それを文脈に合うように変えれば解ける問題だった。小問5は指定語句なしの60字の記述問題で、筆者の主張を問う問題であった。指定語句がない分だけ、正確な読解力と記述力が試されるものであった。段落の働きを問う選択問題が毎年出題されるので、論説文の読解練習の際には段落の構成を考えながら本文を読む習慣が必要だ。
大問6 作文
今年度は二つの資料から、カタカナ語使用についての考えや意見を述べるという作文だった。テーマとしてはよく出てくるものなので、比較的書きやすかったのではないか。しかし出題の傾向は毎年変わるので、どのようなお題でも自分の意見を8分程度で確実に書ける力が必要となる。
国語は一朝一夕で点数に結びつく教科ではないため、日頃から文章題に触れておく必要がある。特に福島県は、論説文が難解な文章であることが多い。論説文は、自分で読む機会を作らないとなかなか読まないので、意識して国語の学習に取り組んでほしい。また、間違えた際には「なぜ本文のその箇所が解答に結びつくのか」を徹底的に考えたり、添削指導を受けたりするとよい。漢字や文法・基礎知識などやれば得点になるものは、毎日5分~10分で構わないので、継続することが大切である。
数学
出題形式は一部変更はあったものの、例年とほぼ同じであった。
基本的な計算問題から難易度の高い応用問題まで、幅広く出題されている。対策としては、基礎をしっかり固めることはもちろんであるが、基本的な問題であっても解法を身につけるだけでなくしっかりとした「理解」が伴わせる必要がある。また、高得点を取るには、高難度の『図形の証明』『関数』『空間図形』をいかに攻略できるかがカギである。
大問1・2 計算問題、基本問題の小問集合
基本的な内容が出題される。大問1はごく基礎的な内容だが、ここ数年大問2では、しっかりとした理解をしていないと得点することが難しい問題も出題されている。今回は、『作図』の問題では、「直角二等辺三角形の性質」を理解し、それを表現するのにどのような作図をすればよいのか判断しなくてはならない難易度の高い問題が出題された。
大問3 (1)確率(2)標本調査
(1)の確率は、よく目にする「カード」を取り出す問題であった。②に関しては、『平方根』という他の単元の内容が理解しきれていないと解けない問題であった。(2)は標本調査からの出題であった。難易度は高いものではないが、3年生の最終単元で触れる機会が限られる内容であり、問題文に書かれている内容をしっかり把握しないとならないものであった。
大問4 方程式の文章題
平成29年度以来の題構成であった。(1)では「求める過程」を書かせる例年通りの『連立方程式の文章題』であった。一見、難易度が低そうな問題だが、文章からしっかりと内容を把握する力がないと、どう立式すればよいか判断できない問題であった。(2)は(1)の答えを元に、別な値を求める問題であった。
大問5 平行四辺形になることの証明
大問4に伴い、証明のみの1題構成。平成17年度以来の「平行四辺形」になることを証明することに加え、「線分の長さの比」から等しい辺を示すなど、かなりの高難易度の問題であった。仮に分かったとしても、相当の時間を費やす可能性が高かった。
大問6 関数
例年に比べれば難易度は低めではあるが、(2)②は「文字座標」を使い、該当する座標を見つける、例年通り難易度の高い問題であった。
大問7 空間図形
例年通り『三平方の定理』『相似な図形』の内容を活用して解く問題。どちらも中3生の2学期終盤以降に学習する内容であり、どれだけ演習ができるかが分かれ目となる。特に今回は(2)で「等脚台形」の知識がないと解けない問題が出題されており、様々な問題に触れていないと、きっかけさえ掴めない可能性がある問題であった。(3)は(2)の答えを利用して解く問題で、例年よりは難易度は低めではあったが、十分な難問であった。
英語
大問数は5つ。構成に関しては例年と大きな変化はない。長文は中1・中2の単語がほとんどであり、中1のころからの語彙力・文法力・読解力の育成が必須となっている。
大問1 リスニング
放送問題2、3の順序が入れ替わった。それ以外の特段変更は無い。放送問題3も比較的簡単な英単語で解答が構成されており、どういった単語が入るかも前後の文章からある程度は想像できる(②の問題は数字が入るなど)。また、リスニング問題に関しては、今回の放送問題3のように見直しができる部分もあるので、問題が終わった後にすぐ大問2にいくのではなく、時制や三単現のS、複数形か単数形かなどの見直しをするクセをつける必要がある(今回は放送問題3の③の主語がHikariなので、答えのholdにSがついてholdsとなる)。
大問2 基礎文法、並べ替え
形式や難易度に大きな変更はみられない。問題集などによく出るパターンや、教科書の文章中の表現と酷似した問題も見られたので、教科書内容を幅広く理解していれば解答にたどり着ける。(2)の並び替えの問題の難易度が高めであったが、これも中3のunit3で学習する内容であったので、やはり教科書を深く読み解くことが大切となる。
大問3 英作文
会話の流れに沿って、正しい英文になるように空所補充を行う問題と、与えられた日本文をそのまま英作文する問題。(1)到着する・・・get to~ は比較的容易でcanの後で原型なのも易しい。(2)は、主語がどこまでなのかに注目し、自転車に乗ること=不定詞もしくは動名詞で書くことに注目する。
大問4 対話文
3人の登場人物が「私たちの町の為にできること」について対話の内容を読み解く問題。単語総数547語で例年より長めの文章だが、使用している単語は中1・中2生のものが中心で、約90%が中1生の単語(中3生の単語は26単語、中2生は41単語)。よって、比較的読みやすく、丁寧に読み解いていけば怖くない内容と言える。とはいえ文章量が多いため、大問4で時間を使いすぎると大問5を解く時間が無くなることも考えられる。余裕をもって解答にたどり着くためには、読解には中1のころからの継続的な学習による単語力・文法力の強化と、長文演習の数をこなし、まずは慣れることが必要となる。
大問5 長文
世界を良くするという大きな話題についてのスピーチ。環境問題なので全員がイメージは湧くもの。481語。対話文よりは少ないが、単語の難度は高め(中3生の単語は45単語、中2生は80単語)。単語は中3の終わりごろの単語も出ている。こういった単語が出てくる時期は受験の直前でもあるため、単語の学習を十分に行う余裕はない。ただ、前後の文章から意味を想定する力があれば、何とか読める。また、今回(6)の問題に英語1文で書かせるといった新しい傾向の問題も出題されたが、難易度は中程度なので、問題そのものは怖くはない。ただ、最後の問題であるので時間に余裕が無く、問題演習をこなし時間内に解く訓練を繰り返すことを、日々の勉強から行う必要がある。
理科
●大問が1つ削減され、大問8題構成(物理・化学・生物・地学から2題ずつ出題)となった。これまでにあった大問1(小問集合)が削減された分、他の問題では対話文形式の問題や、身近な現象に理科を関連付けたような問題など、「思考力」を試すような問題へと変化しているように感じる。
●選択肢で答える問題が増加。基礎事項を問う問題が多いが、選択肢も多く、教科書本文のような文章の「穴埋め形式」などもあり、教科書の細かい部分まで目を通しておかないと正解を導き出すことができないものも多い。
●記述問題の問題数が増加
2019年度…3問 2020年度…4問
大問1・2 生物分野
ここ3年間は植物から出題されていたこともあり、大問1が細胞分裂、大問2が消化と排出であった。基礎を問う問題がほとんどであるが、大問2(3)の血液成分の問題に関しては、血小板の大きさや、「赤血球は毛細血管を通り抜けられるかどうか」などが問われている。教科書に載ってはいるが、まずほとんどの生徒が「やっていない」知識であるといえる。わからずとも、持っている知識を組み合わせてどれだけ選択肢を削れるか、「考える」ことが必要な問題であった。
大問3・4 地学分野
昨年が「地層」と「環境」であったことから、今年は大問3「天気」と大問4「天体」が出題された。特に大問3は対話文形式の問題文で「海陸風」に関する内容が中心であった。海陸風は授業で軽く触れる内容であるため、細かい部分まで復習できていたかどうかが問われる。大問4に関しては基本的な内容を問う問題が多いが、(2)に関しては惑星の公転周期が選択肢の中に記載されているが、知らなくてもそれ以外の惑星に関する基本的な知識を組み合わせれば解くことは十分に可能。
大問5・6 化学分野
大問5は「うすい塩酸と炭酸ナトリウムの反応」、大問6は身近な生活と関連付けた「発熱・吸熱反応」の問題である。大問5(4)(5)は計算問題であるが、表からわかる値を落ち着いて使うことができれば単純な計算で解くことが可能である。大問6に関しては「水酸化カルシウムの化学式」が問われている。化学式をただ暗記しているだけでは対応できない問題であり、イオン式と化学式の関係をしっかりと学習しておく必要がある。
大問7・8 物理分野
平成30年度入試では「電流」と「圧力」、平成31年度入試では「光」と「電流と磁界」が出題されていたこともあってか、今年の入試では大問7「ばね・浮力」と大問8「運動」が出題された。大問7(4)では浮力の計算問題があるが、図の関係がわかれば基本的な計算で解くことが可能である。(5)の記述問題に関しては、浮力と体積の関係をしっかりと学んでいたかどうかがカギとなる。大問8では「斜面を下る運動で等速直線運動する」問題。この問題は普段「摩擦・空気抵抗無し」の「水平な面」といった特別な場合で出題されることが多いが、今回の問題は「摩擦・空気抵抗あり」の現実で実際に起こる現象とほぼ同じであるといった珍しいパターンの問題であった。
社会
全体的な問題構成においては大問6題、小問45問で出題。解答形式は、記号選択20題、記号整序3題、語句記入16題、記述問題5題、作図問題も1題出題された。地理、歴史、公民からは、ほぼ同量の問題数の出題となっており、例年とほぼ変わらず。基本事項の理解を求める問題が中心となっている。
大問1 世界地理
ヨーロッパ、アフリカ州の地図をもとに出題。一部の地域を中心とした出題は4年ぶり。雨温図と各国の輸出入や鉱産資源等に関する表を用いた問題は必出になっている。気候帯の特徴、代表的な産物、国名は最低限抑えるようにしておきたい。
大問2 日本地理
東北地方の地図をもとに出題。(1)①のように、北緯40度という基礎事項を押さえておき、それを基にして解答を導く問題が比較的多かったと思われる。毎年様々な地域、分野について問われるが、基礎の徹底をまずは怠らないことが大事。
大問3 古代~近世
ここ数年の歴史は近現代史とテーマ史という大問構成であったが3年ぶりに古代~近世史と近現代史の大問構成に戻した。内容としては基本事項を押さえておけば十分に解答できる問題。
大問4 近現代史
4枚の写真を基に出題。すべてが教科書にも掲載されており、大問3同様、基本事項を押さえておけば十分に対応可能。ただし、各年の出来事に対してはしっかりと整理しておくこと。
大問5 経済分野
(4)の正誤問題はよく読んで問題に取り組んで欲しいが、見慣れない表やグラフも特になく、各問とも教科書を整理しておけば十分に対応可能。
大問6 政治分野
人権の歴史から国際関係まで多岐にわたって出題。記述問題が2題出題されているが、条件語句から十分に解答を導ける問題。そのためにも各用語の内容把握まで学習していきたい。
地理分野と公民分野の一部で見慣れない資料からの出題があったが、多くの資料、写真は教科書からのものであった。ほぼすべての問題が教科書を読み込むことにより、それのみで十分に対応可能な問題となっていた。思考力を問うような問題はここ数年と比較しても明らかに減ったと考えられる。教科書をよく読み、基本事項を徹底して押さえるだけでも十分に高得点が望める問題と考えられる。